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「……あー、ちょっと、浮かれてたの、かも」
静かな空間でそう呟くと、妙な気合いが入っていた自分にも笑えてくる。
何だか、気負ってた分、力が抜けた。
少しだけ息を抜きたくなって、一階に着くと自販機のあるスペースへと寄ることにした。
お気に入りの紅茶の缶を拾い上げ、ロビーへ向かおうと顔を上げると。
エントランスの向こうから、男性が入ってくるのが見えた。
……長瀬、だ。
そう認識した途端、気の抜けていた私の心臓は急に忙しなく動き出す。
こんなところでばったり会えるなんて、思っていなかった。
向こうからは、まだ私の姿は確認できないだろう。
私は彼に声をかけようと、柱の影から一歩踏み出そうとした。
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