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大不況の到来だな。
俺の会社も煽りを食らって倒産だ。
呆気ない。
クラブはそれでも健在。
そこのバイトと他のバイトで食い繋ぐ。
なんせ、親の会社も倒産だ。
弟は地元大学の大学生。
アイツも必死でバイトだ。
やがて弟も卒業。
だが、不況の時代。
地元に就職先などない。
弟は東京で就職だな。
親も地元で再就職。
元同僚のツテとさ。
残るは俺だけ。
だが俺にもツテはある。
前の会社の先輩に誘われているのさ。
ただ、場所は名古屋。
親を置いて地元を出ることになる。
親も年だ。
迷ったよ、正直。
だが…
「おまえの人生だ。
悔いを残してどうする。
父さんは、まだまだ現役だ。
いらぬ心配をするものではない!」
そう後押ししてくれる。
「でも、俺は長男だし…」
「バカもぉ~ん!
子の不幸を望む親などおらん!
おまえの人生は、おまえのモノだ。
行きなさい。
前の会社の方からお誘いがあったのだろ?」
!
なんでそのことを!
「どうしてそれを!?」
「その方から、おまえ宛に電話があってな。
おまえは出掛けておるし、要件を聞いた訳だ。
まさか就職のお誘いとはな。
せっかく誘って下さっているのだ。
行きなさい」
「け、けど…」
「まだ言うのか!
まぁ、明日、おまえの先輩が迎えに来る。
ちゃんと準備をするんだぞ」
ちょ!
流石は俺の親だ。
俺の性格を把握しているな。
前もって伝えられたら、断りの電話をしていただろう。
だが相手は既に移動中だろう。
いつ頃からの話しかは分からない。
忙しい最中に会社の休みを利用したとしても迎えに来る訳だ。
そんな先輩に断りが言える訳もない。
「分かったよ。
先輩も久し振りの実家かぁ…
先輩にご足労頂いたことだし、親父の段取りを無駄にはできないか…
分かったよ。
行くよ」
それからが大変だ。
バイト先に連絡して辞めることを伝える。
文句の一つも覚悟していたんだが…
スンナリと許可が…
先輩と親父が、既に段取り済み。
俺の連絡待ちだったらしい。
完全に、やられたなぁ。
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