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――――――
「う、海佳!」
「……はい」
胸が痛い。心臓がバクバク鳴っている。今すぐ無かったことにしてこの場から逃げ出したい。心底そう思う。
だがそれと同じぐらい、いやそれ以上に、俺はこの気持ちを彼女に伝えたかった。
それはとても勇気がいることだった。
それでも、俺は後ろ向きな考えをかなぐり捨てて、叫ぶように伝えた。
「す、好きだ!俺と……つ、付き合ってくれ!」
言った……!
思わず瞑っていた目を開けるだけの気力は残っていない。後はただ、固く閉じた瞼の向こうにいる海佳の返事を待つのみだった。
「……はい!」
かくして、答えはイエスだった。
「ほ、本当か!?」
喜びのあまり目を見開いた先には、満面の笑みを浮かべる、大好きな幼馴染み。
そんな海佳は、しかし今度は少し膨れっ面になって小言を言ってきた。
「でも、言うの遅すぎだよ。私、ずっと待ってたのに」
「そ、そんなこと言ったって……」
確かに、なんとなく海佳も俺と同じ気持ちを抱いているだろうと気付いてはいたのだ。ただ、なまじ幼い頃から仲が良かったせいで、その延長なだけなのかもしれないと考えてしまうともう駄目だった。
「……って!その口ぶりじゃ海佳だって俺の気持ちに気付いてたんだろ?!なら海佳から言ってくるんでも良かったんじゃないか?!」
「それは、ほら。やっぱ告白っていうのは男の子からするものじゃない?」
「なんだよそれ」
「悠希は立派な男の子だって事だよ」
「……」
してやったり、と微笑む海佳に対し、
「……ぅっせぇ」
照れ隠しの為にそうぶっきらぼうに答えるので精一杯だった。
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