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4月29日。ゴールデンウィーク初日。この日は海佳の誕生日であり、俺はそんな日にとうとう海佳への告白を達成した。
何か思い切るきっかけが欲しかったっていうのもあるし、海佳へ俺の愛をプレゼント……なんて、少しロマンチックな考えもあったりして。
……プレ、ゼント?
「……ああぁぁぁ、しまった……」
「ちょっと、どうしたの?」
思わず頭を抱えた俺を海佳は心配してくれた。だがその優しさが、今の俺にはとても痛い。
「……誕生日プレゼント、買っとくの忘れた」
何が愛をプレゼントだよ。気持ち悪すぎるっての。しかもそんな煩悩のせいで本当のプレゼントを忘れるって、男としてどうしようもないだろ……。
「あぁ、そんなことか」
「そんなこと?」
しかし、本来怒るべきである海佳は、あっさりとしたものだった。
「お、怒ってないのか?」
「うん、怒ってないよ」
だって、と、海佳は続ける。
「物なんかよりもっと嬉しいもの、もう貰ったから」
そう言って、海佳はほんのり頬を赤らめながら俺を上目遣いで見つめてきた。成長期になって追い抜かした身長はその後も伸び続けているから、見上げられるのは当然なのだが……。
これは如何せん、威力がデカすぎる。
「……お、おう」
俺は恥ずかしさと、それ以上の嬉しさのあまりそれ以降言葉を重ねられなかった。
「か、帰ろうか」
俺は早口に告げると、率先して先を歩き出す。
だが、それはすぐに引き止められた。
「悠希」
「ん?」
そうして、声に従い振り返った先で。
俺の唇に、柔らかい何かが重なった。
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