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頭が真っ白になる。そのくせ、口元の感覚だけは驚くほど精細で。
「告白は頑張ったから、これは私からで許してあげる」
「あ、え、う、んぁ?!」
今、俺、海佳に、キ、キスされ……!
顔が発火しそうなほどに発熱する。目の前で少し背伸びした海佳の顔も、同じくらい真っ赤になっていた。
「……さ、帰ろう」
「……ぉぅ」
俺は海佳に手を引かれ公園を後にする。
幼い頃、お姉ちゃん風を吹かしていた海佳にこうして手を引かれたことがあったなぁと、ぼーっとした頭で漠然と考えていた。
俺たち2人は公園から外に歩み出た。告白をするなら、昔から飽きるほど一緒に遊んできたこの公園だと前に決めていた。逆に言うと、そこ以外に思い付かなかった。それが功を奏したのか定かではないが、今こうして海佳と仲良く並んで歩いているということは、少なくとも悪くはなかったんだろうと思う。
家の近い俺と海佳は帰る方向が全くと言っていいほど同じだ。せいぜい、同じ通りでどちらの家が近くにあるかの違いでしかない。だからこそ、こうしていつまでも手を繋いで歩いていられるのだ。
幸せだった。前もこうして手を繋いだことは数え切れないほどあるが、今日からのこれはまた違った意味合いを持つことになる。
だからこそ、手のひらの温もりが、今はとても愛おしく感じられた。
ああ、なんでもっと早く伝えなかったんだろう。
そうすれば、この温もりをもっと早くに感じられていたというのに。
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