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「花」
雑踏の中で訊きなれた優しい声が、私の名前を呼んだ。
「お兄ちゃん」
改札口の向こう側で手を振るお兄ちゃんを発見した。
「よかった。会えないかと思ったよ」
地元と違って路線も人も多いし。お兄ちゃんは貸してとボストンバックを受け取ると、
「ちゃんと1人で来れたな。えらい、えらい」
と頭を撫でた。いつまでも、子供扱いは止めてよね。あたしももう、20歳になるんだから。
「駅から15分くらい歩くんだ」
駅を出て、商店街を抜けて、大きな公園に沿って、お兄ちゃんは歩みを進める。
あたしは目新しい景色にキョロキョロと辺りを見渡しながらお兄ちゃんの後をついていった。
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