バラとチョコレート

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とんだうっかりさんだなぁと自分に呆れる。   ドアノブにケーキの入った袋を引っ掛けて、今日は帰ろうと思った時、コートのポケットに入れた携帯が鳴った。   「カヲルさん、今どこにいるの?」   諭からだった。どうやら外にいるみたいだ。行き交う車の音が電話越しに聞こえる。   「今ね、諭のアパートまで来たんだけど、合鍵忘れちゃって・・・」   「え?そっちにいるの?」   諭にしては珍しく驚いた声を上げた。   「ちょっと待っててもらえる?すぐ帰るから」   慌てた様子の諭はそう言ったまま電話を切った。帰るに帰れなくなり、部屋の扉に寄りかかり、諭が帰って来るのを待った。
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