バラとチョコレート

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2人でアパートに帰って来ると、諭の部屋の扉の前に人影が見えた。   「金次・・・お前、何でここにいるの?」   諭が声を掛けると、扉に寄り掛かって地べたに座っていた少年がもぐもぐと口を動かしながら、「やっ、さとっぽ」と片手を挙げた。 そのもう片方の手に持っているのって・・・   「私のケーキ!それ、諭へのプレゼントだったのに」   思わず声を上げてしまった。さっきドアノブに袋を提げたままだったことを今、思い出した。   「これってカヲっぽが作ったの?最高だよ!!ゴチです」   口の周りにチョコレートをべっとりつけながら少年が微笑む。 「お前・・・人の物を・・・拾い食いするなって姉さんに言われてないの?」   「そんなに怒らないでよ。まだ半分残ってるしさ~。それにママとケンカして家出して来たんだ俺。だから泊めてよ、さとっぽ!それともいたいけな子供を寒空の下、放り出すのかい?」
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