エピソード1 ミギハシ誕生

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(1) ミギハシ誕生 <前編> ・・・  樹木の生い茂った場所だった。  いや。ただの樹木ではないだろう。だって、こんなにもギッシリと葉を繁らせているばかりか、縦横に走る蔓のようなものが、僅かな隙間でさえも縫い隠すように幹や枝に巻き付き、或いは葉と葉の間を編み上げるかのように渡って完全に視界を遮っているんだから。  そんな密集した樹木。人の入り込む余地などない密林…なのかと言えば、そうではなかった。  樹木の幹と幹の間には、まるで通路のような空間が存在し…いや、実際に通路としか言えないように奥へと続いているようだ。  まるで…人を、その奥へと誘い込み、拐かそうとでもするかのような…  源霊(げんれい)…こと、ディ・源霊・アモンは、1時間ほど前からその樹木に覆われた空間を、奥へ奥へと進んでいた。  空を完全に遮る樹木。その割には何故か明るいその空間は、明らかに人為的に用意された空間…通路だった。  そう。これは、間違いなくダンジョンなのだろう。  源霊は、いつもするように「環境警戒レベル」を+1だけ引き上げる。  最高レベルに引き上げるようなことはしない。それは油断と紙一重に繋がるから。  自分の視覚と聴覚、嗅覚と皮膚感覚も含め…あらゆる感覚を研ぎ澄ます。 ・・・
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