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それが源霊のスタイルであり、源霊を様々なシムタブ型MMORPGのトッププレイヤーとして君臨させている強さの一端だった。
源霊は、基本的に他者を信じない。
いや。全く信じないということではないが、全面的に信じるということは決してしない。
人から与えられた情報というものは、正しいこともあるが、その多くは誤解や願望、無責任な妄想、無邪気な誇張などによって真の姿を歪められているものだ。
ましてやライバルたちと駆け引きし、競い合い、戦い合うシムタブ型MMORPGでは、他者からもたされた情報は往々にして欺瞞(ぎまん)に満ちあふれているものなのだ。
傍目には、スタスタと無防備に歩いているように見える源霊。
だが、次の一歩を踏み出そうとした瞬間、源霊は不意に動きを止める。
次の一歩が踏むはずだった地面を見据えたまま、源霊は右手を通路の壁となっている樹木の細い枝へと伸ばし…その枝をへし折る。
そして、その枝を見据えている地面の上へと突き立て…
「は。やはり…ただの森の中の通路…というわけでは無かったようですね」
突き立てたはずの枝は、まるで空中で手を離した時と同じように一瞬でどこかに落下していった…と思われるのだが、視覚には地面の中に吸い込まれていったように映る。
間違いない。落とし穴がある。
穴があるようには見えないが、そこへ一歩を踏み出していたら確実に源霊自身も落下していただろう。
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