「件の如しー1 件変ノ章」

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「件の如しー1 件変ノ章」

発端は、国会証人喚問の場だった。 衆院議員 青山佳子(37)の私設秘書 山城奈津代(38)が証人喚問で呼ばれていた。 青山議員らが、大手ゼネコンから裏献金を受け取り、それを隠蔽した問題による国会招致だ。 青山議員は、二世議員に似つかわしくない実力と人気を兼ね備えた政治家だ。また美貌と若さで、国民人気も絶大だった。 末は官房長官か総理かと期待されたが、出る杭は打たれるの習い通り、政治スキャンダルに見舞われた。 それは山城奈津代の証言が終わった時だった。 山城奈津代が突然、証人席で苦しみ出したのだ。 苦しみうなだれる奈津代に、周りの者は騒ぎ、駆け寄り助けようとした。 「ひぃ!」 奈津代に近づいた者が悲鳴を上げた。 何事かと訝しむ国会議員達。 「ぐももぅー」 くぐもった声が、静寂の国会に響き渡る。 突如、うなだれていた奈津代が顔を上げた。 「!?」 顔を上げた女は、人間の顔ではなかった! 顔一面に獣毛が生え、頭には角が伸びていた。 何よりその顔は、虚ろな眼をした牛の顔だった! 石を投げた水面の波紋が如く、我先に逃げ惑う議員達。 それをあざ笑うかのように、山城奈津代だった牛頭の怪物が絶叫した。 『ぐもももぅ、東の海で噴火が起き、島が生まれるぅー』 そう叫び、顔を掻き毟りながら、もがき苦しみ踊る姿は、どこか神秘的な神事を観ているかのようだった。 この一部始終がTV放送されていた。 そして、すぐさま有名動画サイトに流された。 何故か、その投稿者アカウントは削除され動画は消えたが、時すでに遅く、続々と転載配信された。 「これは件(くだん)では!?」 噂は広がった。 件とは、古くから伝えられる半人半牛の怪物で、凶事や災害を予言する妖怪だという。 震災で目撃された、という噂が有名な都市伝説となっている。 事実この事件後、小笠原諸島の西之島の近海が噴火して、島が隆起した。 「予言が当たった!?」 多くの者が驚き、件の動画に喰い付いた。 しかし、事態は急変する。 画像ソフトで作ったCG動画を流したと、ある投稿者が名乗り出た。 やはり偽物か、と一斉に騒ぎは沈静化した。 情報操作の常套手段で、一つの偽情報で全てが黙殺される。 それ故に、その後報告される件出現は、質の悪い冗談とそっぽを向かれた。 これが「国会件出現事件」のあらましである。 この発端が、後に人類を滅亡に追いやる序曲だった。
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