「件の如しー2 件鬼ノ章」

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「・・・」 「俺にも言えない事なのか?」 項垂れていた明日馬は、芦屋に向き直り、今までの経緯を説明した。 「ヒカルちゃんがさらわれた!?」 「はい・・・相手は正体不明ですが、手慣れた感じで玄人でした」 「しかし救急車を使っているんだ、それなりの大きな組織かも!?」 「ですから、芦屋さんにはご迷惑を掛けたくないとー」 「馬鹿野郎!」 芦屋が怒鳴った。 「俺はヒカルちゃんの保護者で、お前の兄貴みたいなもんだぜ、水くせぇ奴だな」 芦屋がまた小突いた。 明日馬と芦屋は、兄弟のような関係らしい。 「それで、お前はヒカルちゃんを取り返しに行くと?」 「はい」明日馬は短く答えた。 「それなら俺も連れて行け!」 「・・・嫌だと言っても無駄ですよね?」 「わかってるじゃねえか! なあに、俺も弁護士だ、相手を殴っても自分で弁護するさ」 芦屋は豪快に笑った。 真鍋が車で待っていると、明日馬と芦屋が雑居ビルから降りて来た。 剣呑な事に、明日馬は日本刀を背負っている。 「弁護士の芦屋さんだ」 明日馬が短く紹介した。 「!?」 再び混乱する真鍋。黒い背広を着た芦屋の見た目は、暴力的だから無理もない。 「芦屋だ。明日馬の兄貴みたいなもんだ」 これまた意味不明の説明をして、車の助手席に乗り込んだ。 「申し訳ないが、俺も一緒に連れて行け!」 命令口調だ。 真鍋がビビりながら車を発進させた。 「申し遅れました、自分は真鍋です」 真鍋が、助手席の芦屋に挨拶する。 明日馬は後部座席で、短刀型手裏剣の刃を研いでいる。 「明日馬から短い説明を受けたが、あんたの、いや、あんたらの正体が解らねぇ」 「自分は件を研究している者です」 「件・・・!?」 芦屋の眉間に皺が寄る。 「俺のお袋が関西出身だったから、件という妖怪の話しは聞いた事あるが、件とは一体何だ?」 芦屋が訊いた。 「件とは、古来から伝わる半人半牛の怪物ですね。 歴史的な凶事や災害、戦争の前兆として生まれ、その予言をすると伝えられています」 真鍋がタバコを取り出し、一服吸い、 「その姿が、昔は人の頭に牛の身体でした。 近年になると、牛の頭に人の身体だという。もっとも、これは牛女だとか。 要は都市伝説の一種ですね」 「しかし、俺は目の前でヒカルが牛に変わるのを見た・・・」 明日馬が苦悶の表情で言う。 真鍋がバックミラーで、チラリと明日馬の様子を見る。
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