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ちらりと横目で見ると、紫の法衣を纏った男が立っていた。
白い顎鬚が豊かで、頭髪も白く後ろに撫で付けていた。
その眼は、尊大で、不遜で、高慢な、鈍い光を湛えた迫力のある眼だ。
「身体が動く時、脳から筋肉に信号が送られて筋肉が動き、この時に弱い電気が発生して皮膚の表面に染み出す。
これが『準静電界』と呼ばれるもので、すべての生き物 は準静電界の膜で包まれている。
我がミノタウロスは、この『準静電界』を察知するのに特化した件だ」
絶対的支配者の眼光で、明日馬を睨め付け言った。
「遺伝子工学の粋を尽くして創ったδ(デルタ)タイプの件だ。
予言の能力は無いが、敵の『準静電界』を読み、敵対する者を悉く憤殺する、まさに古のミノタウロスだ!」
支配者の演説のように、激昂して叫ぶ法衣の男。
「お前は誰だ?」
明日馬は、怒りを露わにして訊いた。
「我が名を尋ぬるか?
死にゆくお前には過分な配慮と思って、我が名と共に地獄に逝くが良い!
我が名は、アエーシュマ・アンラ・マンユよ!」
叫ぶと同時に、ミノタウロスが突進して来た。
明日馬は手裏剣を、ミノタウロスの両眼目掛けて投擲した。
案の定、ミノタウロスは手裏剣が宙を奔る間に、その両眼を太い腕で護った。
ざんっー
明日馬がその隙に、ヒカルを連れて、森の茂みに飛び込んだ。
一目散に、芦屋が待っている場所に向かった。
ざんっざんっー
後ろから、ミノタウロスが追って来る音がする。
芦屋が待っている場所まで来た。
芦屋が樹の根本に座っている。
「芦屋さん、逃げろ!真鍋は殺された!」
明日馬は絶叫する。
連れているヒカルを見て、驚いている芦屋は、
「どうしたんだ!?」
明日馬に問いかける。
芦屋を追い越した瞬間、
どんっー
鈍い衝撃音がした。
見ると、芦屋の胸から角が生えていた。
「がっ」
芦屋が血と共に、呻き声を吐き出した。
ミノタウロスが、芦屋の身体を貫いていた。
「芦屋さんっ!」
叫び、刀を振る。
その刀の軌道に、芦屋の身体を盾に頭を振るミノタウロス。
刀を振り切れず躊躇した明日馬に、ミノタウロスが突進した。
芦屋の身体と共に、倒れる明日馬とヒカル。
心臓を貫かれた芦屋は、すでに絶命していた。
ヒカルを置き、再び正眼に刀を構える明日馬。
だが、どうする!?殺気が読まれては斬撃が出来ない!
苦悶する明日馬。
攻撃して来たと同時に斬撃を繰り出す。
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