「件の如しー2 件鬼ノ章」

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「件の如しー2 件鬼ノ章」

真鍋と名乗った男がスペアタイヤ出し、パンクの修理をしている。 「アンタ、いや真鍋さん、件の研究者と言ったのかー」 「はい、件を研究している施設の研究員でしてね。 あの救急車の行き先にご案内します」 真鍋が答えた。 「・・・何が目的だ?」 訝しむ明日馬に、真鍋は神妙な面持ちで言った。 「それは行き先を案内する間に話しますよ」 「わかった。では、すまないが寄って欲しい所がある」 パンクの修理が終わった頃合いに、明日馬が切り出した。 「お安いご用です。 あっ、すいません、貴方のお名前をお伺いしていなかった!」 「松田・・・松田 明日馬だ」 汚い3階建ての雑居ビルに、真鍋の車が横付けした。 明日馬が降り、3階の窓を見上げた。 もう深夜で日が変わろうとしていたが、窓には灯りが点いていた。 「どなたの所に行くのですか?」 真鍋が声を掛けると、 「弁護士だ」明日馬がぶっきら棒に言った。 「!?」困惑する真鍋。 階段を上がり、3階の奥の部屋に向かう。 奥の部屋のドアには、チラシや店屋物のどんぶりが散乱していて汚い。 入り口には『芦屋弁護士事務所』と、曲がったプレートが付いていた。 明日馬はいきなりドアを開けた。 「うわっ!」 奥でうわずった声がした。 「明日馬です」 明日馬が言い、ずけずけと中に入って行く。 奥の部屋から、男が恐る恐る顔を出す。 「明日馬か!? 相変わらず無礼で、相変わらずデリカシーがないな!」 短く刈り込んだ頭の、眉毛の濃い、いかつい顔をした男が叫んだ。 「芦屋さん、ご無沙汰しています」 明日馬が頭を下げた。 芦屋と呼ばれた男が、明日馬を軽く小突いた。 「おいおい、女とシケこんでいる最中だとは思わなかったのかよ」 芦屋は豪快に笑った。 芦屋は胸が厚く、堂々たる体格の持ち主だ。 身長も明日馬より高く、シャツの腕を捲り太い腕を出している。 「すいません、忘れ物を取りに来ました」 明日馬が侘び、書類や本が積み上げられた奥のロッカーを開いた。 中から伸縮式警棒と短刀型手裏剣を取り出した。 「おいおい、忘れたんじゃなくて置いていった物だろ、それは」 「・・・」 明日馬は無言で応じ、ロッカーの奥から一振りの日本刀を手に取る。 「親父さんの形見の刀を必要とするとは、余程の事態か?」 「・・・」 「相変わらずダンマリかよ、お前は」 芦屋が眉間に皺を寄せ、憮然としている。
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