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「…は?なに言ってんだお前。」
冗談だと思った
いつも突拍子もないことを言い出す奴だから、今度もそんなものだろう と
けど、お前の顔を見て確信した
本気で言っているのだと
「本気、なのか。」
「うん、いきなりでゴメンね。」
「先生はいいって言ったのか?まだ修行も途中だろ。」
僕は柄にもなく必死でお前を引き止めようとした
僕の前からお前がいなくなるなんて考えたこともないし、考えたくもない
「修行は大体終わってるじゃないか。残りは俺1人でも充分にできるよ。」
「ー!だったら、」
「ゴメン。もう決めたことなんだ。だから、最後に一緒に散歩しようと思って…。」
「…なんで、急に出て行くなんて言い出したんだ。」
「…ゴメン、言えないよ。」
「ゴメンゴメンって、さっきからそれしか言ってねーじゃねェか!なんでだよ!僕やリアに嫌気がさしたのか?」
「そんなんじゃないっ!!俺はっー」
一瞬、お前はなにか言いたそうにしたが、頭を振って口を閉ざす
「2人とも俺にとって大事な親友だよ。…だからこそ、なんだ。」
「どういうことだよ?僕らに関係してんのか?」
「…もう、行かないと。」
淵から降りて歩きだすお前に走り寄ろうとする
「おいっ!待てよ!」
「…ゴメン。」
丁度、園庭の入口に来たときだった
もうすぐで追いつきそうだった所で、突然下から氷の壁が目の前にせり上がってきた
誰がやったかはわかっている
だからこそ、この壁が簡単に壊れないことも知っている
それでも諦めきれず、自分の足元に作り出した円の中から真っ黒で鋭利な触手を立ち上らせて壁に切りつける
そうしてる間にもどんどん遠ざかっていく後ろ姿に大声で叫ぶ
「待てよっ!“ルノワール”!!」
それでもお前は振り向くことも、歩みを止めることもなかった
「…本当にゴメン、“グリード”」
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