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……またスポンジ“失敗”。
彼と出会った時も、無残なケーキを食べさせたから
“今度こそ!” ってそう思ってたのに。
やんなっちゃう。
ふにゃふにゃの萎んだスポンジ。
……それはまるで、今の私の心を映している鏡のようだ。
“幸せ” その言葉が怖いだなんて、初めて知った。
幸せはきっと、誰かに壊されるために存在しているのかもしれない。
負けないといつだったか、そう思った。
だけど……今はそう思えない。
ただ切に願うこと、この幸せを壊さないで……。
「この本どおりに作ったのに、どうして膨らまないの?」
とブツブツ言いながら、私はあらかじめ買っておいた市販のスポンジを取り出す。
これだけは使いたくなかったんだけどな。
だって、……ねぇ?
でも仕方ない!
その後、スポンジを用意しただけで、ケーキはあっという間に完成した。
生クリームを塗って、トッピングに苺を載せる。
単純なおかつ簡単な作業だった。
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