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私は部長の上着を渡すと、玄関まで一緒に出た。
「下まで送ります。」
「いや、ここでいい。帰りたくなくなるからな。おやすみ。明日は無理するなよ。」
「…はい。」
部長が階段を下りて下に着くと、上にいる私に一度手を上げて駐車場に向かって消えていった。
帰り際。
…部長がさらっと言い過ぎて
…聞き間違いかなと思うくらい。
『帰りたくなくなる』
私は玄関の外で涼しい風に当たりながら、自分の早まった鼓動と熱い頬が冷めるのを待っていた。
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