苦手なヒト

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少しの胸の高まりを感じながら、部屋にそのまま立っているのもおかしいので、言われた通りソファに腰を下ろした。 大きくはないが座り心地のいいソファだ。 カタッ。 寝室から室井が出てきた。 …初めて見るジーンズ姿。髪の毛も結び直したのか、会社ないるときより緩くカジュアルに結んである。 そして…エプロンをしながら。 「部長、上着貸してください。」 室井に言われるままに上着を脱ぐと、室井はそれを丁寧にハンガーにかけた。 エプロン姿でそんなことをしてくれる室井を見ながら、顔が赤らんできそうだ。 「…目のやり場に困るな……。」 「え?…この格好ですよ?」 室井は気にもしない様子で言う。 「テレビでも見て待ってて下さいね。」 そして、キッチンで買ってきた物を仕分け始めた。 「…聞くの忘れてましたけど、部長って嫌いなものありますか?アレルギーとか。」 仕分けの手を止めてこちらに問いかける室井に笑顔をつくる。 「何もないよ。楽しみにしてる。」 緩みっぱなしの顔も… もう隠しきれなくなっていた。
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