苦手なヒト

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テレビは一応点けてみたが、テレビを見るなんて馬鹿らしい。 俺は背を向けて料理を進める室井を眺めていた。 全く無駄な動きなどないように見えた室井は、本当に手際がいいようだ。 カチャカチャ。カタカタ。 料理の音も心地よかった。 俺は我慢出来ずにキッチンへ立った。 鍋からはいい匂いが漂っている。 「…何が出来るんだ?」 「ぶっ、部長!?…びっくりした。」 俺の言葉に室井は飛び上がるほど驚いていた。 俺はそんなことは気にせず言葉を続ける。 「何か手伝おうか?」 「じゃあ…すみません。ちょっと私の袖を…めくってもらえますか?」 「ソデ?」 見ると、彼女は何かの準備で両手が粉や卵でどろどろだ。 めくった袖が下がってきたらしい。 俺が室井の腕に手を伸ばすと、彼女のおでこに俺の口元が当たりそうだった。 袖をめくり上げながら… …細くて白い腕に驚いた。
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