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「…そうですね。最初…ここだって、気付きませんでした。」
部長が小さく笑って続ける。
「…この場所、今まで誰にも教えたことがなかったんだ。室井が初めて。これからも誰にも教えないけどな。」
…え?
…私だけ?
部長と目が合うと、部長は私の視線を捕まえたまま私に近付いてくる。
「あの時の桜も室井も、鮮明に覚えてる。あの時から、今まで抱えていた感情が抑えられなくなった。」
そこまで言って、部長の目には一段と優しさが滲む。
「…もう…抑えられない。"室井が欲しい"って。」
心臓が痛いと思うほど急に跳ね上がる。
私は何も言えず、ただ目を見開くばかりだった。
「昨日も…すまない。成瀬のことがあって…俺も慌てたのかもしれない。自分で守りたいと思いながら、自分のものではないもどかしさ…。俺が冗談をやれる人間じゃないことくらい、わかってるだろ?」
部長の目は真剣だった。
目を反らすことが出来ないほど。
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