3624人が本棚に入れています
本棚に追加
ゆいのことが気になるが、通常の業務をこなさなければならない。
電話に応対し、人に呼ばれ、書類を作成する。
ゆいも相変わらず、バタバタしながら仕事をこなしている。
昼休み。
池口が事務所を出て行き、市川が室井を誘っているようだが、構わずゆいに声を掛ける。
「室井くん、ちょっといいか。」
「…はい。琴ちゃん、先に行ってて。」
市川が出て行くのを確認して切り出す。
「…何が言いたいかわかるよな?」
「…え?」
「…朝のことだ。何かあったんだろ?越石は書庫まで一緒に行ったのか?」
「…はい。行きました。…まだ書庫に入ったことがないようで、見たいと言ってましたし…。」
俺はここまで聞いて、また苛立ち始めていた。
「…で、まさか、襲われたのか?」
「そんなこと、されてません!ただ…。」
「ただ、何だ?」
自分でも言い方がきつくなるのがわかったが、早く聞きたくてイライラしてしまう。
ゆいはその後、書庫で帰りがけに起こったことを俺に話した。
沸々と俺の中に怒りが込み上げる。
「手を握られたのは、襲われたのと同じことだ。…だいたい、おまえは隙がありすぎる。書庫を案内するのだって、お前じゃなくていい。…俺以外の男に気を許すな。」
怒りに任せて発した言葉にゆいは口をつぐんで目を伏せた。
…しまった…と思ったが遅かった。
「…すみませんでした。」
ゆいは目を伏せたまま小さく言っただけだった。
最初のコメントを投稿しよう!