不安

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もともと、アイツは研修という名目で営業部にきた。 はじめから、期間は半年と決まっていた。 半年で何が出来るのかと、半ばバカにしていた。 しかし、アイツはすぐに頭角を現した。 今の営業部長の森田さんについていたが、仕事の覚えは並みではなく、森田さんも早い時期からアイツにいろいろと任せていた。 あっという間に一人で商談を進めるようになり、実績を残した。 それはもはや研修というレベルではなかった。 身のこなし、話術、プレゼン力、全てを兼ね揃えていた。 プレゼンに参加したときなんか、社員である俺たちが引き込まれたほどだった。 商談相手からアイツを指命されることさえあった。 アイツは仕事の出来る男として、男どもは尊敬し、憧れた。 女たちはあのルックスと仕事ぶりに沸き立っていた。 バカみたいにみんながアイツに注目していた。 そんな中、アイツに遅れて二ヶ月ほどして、またも研修として女が入ってきた。 それが室井 ゆいだった。 彼女の名前は知っていた。 営業に来る前も別の部署で研修をしていた。どこの部署でも上手くやってきたらしい。社内での評判の良さは外見だけのものではなかった。 営業に来て、それが何でかわかる気はしていた。
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