2761人が本棚に入れています
本棚に追加
私の気持ちなんかお構いなしに、成瀬さんはいつも通りに話しかけてくる。
「室井さん!?…ってか、どうしたの?ずぶ濡れじゃん!?」
「………。」
私が返事をしないでいると成瀬さんが一歩近寄る。
「…髪までこんなに…。」
成瀬さんが私の髪に触れそうになった時、私は言葉を発せず、反射的に目をギュッと閉じて顔を背けた。
「彼女に触るな。」
成瀬さんの向こうから部長の低い声がそれを制した。
部長は大股で私の前に移動して、成瀬さんから私を遮る。
「…触るなって…まるで自分のものみたいな言い方するんですね。」
成瀬さんは前回と同様、挑発的なものの言い方をする。
部長は一瞬言葉に詰まったけれど、次にはハッキリと言った。
「"みたい"じゃない。俺のものだ。」
……部長…!?
私も驚いたけど、成瀬さんも驚いてるようだった。
「…マジで言ってるんですか?」
「おまえに冗談は言わない。」
「…マジで?マジで自分のものにしたってことですか?」
部長は答えなかった。
私は二人のやり取りを黙って見ていた。
…怖かった。
鼓動が早まり、体の震えもただ濡れているから…だけではなかった。
最初のコメントを投稿しよう!