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早く仕事に戻りたい。
早くここを離れたい。
でも、部長も成瀬さんも動かない。
その時、成瀬さんの口許がフッと緩んだ。
「…そっかぁ。…じゃ、西島部長も知っちゃったんだ。」
何か含みを持たせた嫌な言い方だった。
……何を言うつもりなの?
「…部長。」
行きましょう。
そう言いたかったのに、成瀬さんが邪魔をする。
「…室井さんて…敏感でしょ?……特に耳がね。」
自分の顔から血の気が引いていくのがわかった。
心臓が跳ねる。
「…何を言ってる?」
部長が一段と低い声で返した。
成瀬さんはそんな部長とは対照的に口許で笑った。
「…残念。俺だけの秘密だったのに。」
…この人は何を言っているんだろう。
…なんで、こんな言い方。
「…部…長………。」
やっとで声を出し、部長を呼んだ。
涙が視界を滲ませた。
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