不安

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部長はすぐに来てくれた。 部長の車を見つけた時、思わず安堵の息が漏れた。 部長は路肩に車を停めるとすぐに、上着を手にして出て来てくれた。 走って私のところにくると、一瞬私を見て口を開いたけれど、すぐに隣の男性との間に割り込み、後ろから上着を掛けてくれた。 「花を貸せ。」 部長は短くそう言うと、私から花を受け取り車へ促した。 車が出ると、車内の冷房に体が震える。 「…悪い。大丈夫か?」 部長は冷房を緩める。 私の姿をもう一度見てため息をついた。 「…ったく、おまえは…。着替えはあるのか?」 「…はい。置いてあります。」 「ならいいが。会社に着いたら人目に触れるな。俺から離れるなよ。」 「…はい。」 部長の呆れたような態度がまた… 私の胸をチクリと刺した。
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