13/31
前へ
/31ページ
次へ
ゆいは何度も俺にキスをくれた。 俺を感じて、感じさせてくれた。 「…ちゃんと満たされたぞ。」 本心だった。 「…よかった。」 そう言ってまたキスをくれる。 「俺のこと帰さないつもりか?」 本当に帰りたくない。 「まだ月曜ですもんね。帰って欲しくないけど我慢です。」 最近のゆいはこんな風によくかわいいことを言ってくれる。 そう言われると余計に帰りたくないんだが、わかってるのか? ゆいが服を着け始めるので、仕方なく俺も支度する。 今日は駐車場まで送ると言う。俺は本当に帰りたくなくてゆいの言葉に甘えた。 「こんばんは。」 アパートの外でゆいがちょうど出くわした住人らしき人に声を掛ける。 「…こんばんは。」 そう言いながら視線をゆいから俺に一瞬移したような気がした。 若い男だった。 「男もいるんだな。しかも若い。」 男がドアに入って見えなくなってから俺が言う。 「最近入ったみたいです。まだ学生さんみたいですよ。」 「…そうか。」 「じゃ、おやすみなさい。」 「ん。おやすみ。ご飯ごちそうさま。後、ゆいも。」 ゆいは顔を真っ赤にして俺を見送った。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2749人が本棚に入れています
本棚に追加