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「ねえ。知ってる?室井さんてお酒、全然ダメなんだって。」
何が言いたいのか勝野課長が妖しく笑う。
「成瀬くんも来なさいよ。私が室井さんにたっぷりお酒の飲ませてあげるから。室井さんがダメになったら介抱するふりして二人でどっか行っちゃえば?どう?いいと思わない?」
「はあ?俺には関係ないっすよ。それに室井さんだって、そう簡単に苦手な酒飲むと思えませんし。」
「私、"課長"って肩書あるんだけど。…律義な室井さんよ。上司の勧めをそう簡単に断るかしら?」
…マジかよ?
「とにかく俺は行かないんで。」
「ふーん。そ。あなたが来ないなら代わりを呼ぶだけよ。"美人社長秘書"って、男にとってはたまらない響きよね。そんな子が酔っててどうしようもないからなんて言ったらすぐに飛んでくるような人、いくらでも知ってるし。」
「…マジで言ってんすか?」
「本気よ。西島君みたいな性格なら、相手が自分を裏切れば許せないはずよ。あの二人も終わりね。フフ。私は彼女の相手が誰であろうと関係ないけど、…彼女が心配ならあなたが来ればいいだけのこと。」
俺は彼女を睨みつける。
「みんなが二次会に移る前、そうね、11時頃までに迎えに来なさい。着いたら店に電話して。私が室井さんを連れていく。その時間までに電話がなければ代わりを呼ぶから。」
俺は返事をしなかった。
「金曜が楽しみね。じゃ。」
コーヒーを飲み干して勝野課長は缶をゴミ箱に軽快に投げ入れ去って行った。
俺のコーヒーは一口飲んだまま冷め切っていた。
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