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食堂を出てから事務所に戻る前にロッカールームに寄り、リップとルージュの簡単な化粧直しをする。 それが終わるとなんとなくで携帯をチェックしてみる。 毎日するわけじゃないけれど、本当に何気なくだった。 メールが1件。 …部長だ。 『新しいルージュ、似合ってた。会社じゃなければすぐにでも食べたいくらいだ。』 絵文字なし。 …だけど…うれしい。 …気付いてくれたんだ。 …でも、食べたいって……。 私は鏡で自分の唇を見つめる。 思い出すのは部長とのキス。 …こらこら。 仕事。仕事。 私は携帯をしまって事務所に向かった。 午後、部長が帰って来ると、一人で赤面した。 「お疲れ様。何もなかったか?」 部長はそんな私を見ながら、一瞬あのいたずらっぽい笑顔を見せたけど、声の調子はいつも通り。 池口さんや琴ちゃんに変に思われないかと心配したけれど、二人は何も気にしていない様子だった。 …気付いてないよね? 部長が席に着くと、池口さんと琴ちゃんが順番に部長の席に資料を持って立った。 私は部長のコーヒーを入れるために事務所を出た。
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