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彼女を乗せて西島の車は去って行った。
「さてと。帰るか。」
車に乗り込み、運転席から体を伸ばして助手席のシートを起こそうとする。
シートに残る彼女の甘い匂いが仄かに香る。
こんな近くにいたなんて。
今まで俺が彼女にしてきたことで、彼女はこの先も俺に怯え、俺を許さないかもしれない。
でもそれは俺の罪と罰だ。
俺は今日の自分の行動に何一つ後悔していない。
最後に彼女を守れたことがせめてもの救いだ。
俺はもう彼女を追わない。
西島とも初めて男同士の会話が出来たような気がした。
西島を認めたことで、ああなりたいという具体的な目標が出来たような気がする。
実はずっと前から、西島のようになりたいと思っていたに違いない。
仕事や人間関係、もうちょっと本気でやってみるかな。
俺はエンジンをかけると、エアコンを切り、窓を全開にした。
走り出すと、強い風が車の中に入り込む。
彼女の匂いを消し去り、俺の心まで吹き抜けていくような強い風は何だか心地よく、俺は清々しい気持ちに満ちていた。
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