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月曜日、時間になっても池口さんが出社しない。
「池口さん、どうしたんでしょうね?」
「うん。風邪かな?」
琴ちゃんと二人で首をかしげていると部長が事務所に入ってきた。
「おはようございます。」
「おはようございます。」
「おはよう。」
土曜日ぶりの部長。
あ、今日は黒猫ネクタイしてくれてる。
なんて、のんきに思っていると
「池口くんだが、今朝、実家のおじいさんが亡くなったそうだ。池口君の親父さんはもう亡くなってるから池口君が喪主を務めることになる。だから4~5日は休むことになりそうだ。」
「おじいさんが?それは…大変ですね。」
「4~5日ってことは今週は来れなそうですね。」
突然の訃報に私たちの心も少し沈む。
そんな私たちを見て、優しく、だけどはっきりとした口調で部長が言う。
「今週は大変になると思うが、よろしく頼む。」
「はい。」
「はい。」
池口さんがいない。
これはホントに大変になりそう。
私は沈んだ心に気合を入れ直して、池口さんのいない一日、一週間のスケジュールを考え始めると同時に早速仕事に取り掛かった。
午前中、池口さんから連絡が入った。
私がお悔やみを言うと池口さんは申し訳なさそうに欠勤することを詫びた。
そんなこと心配しなくていいのに。
それから営業部に依頼されてる案件が2件あるからそれを先に頼みたいという。私は説明を受けて了承した。
「ごめん。室井さんにはかなり負担掛けるね。あんまり無理しないで、残せる仕事は出来るだけ残して、来週俺がやるから。電話には出られるから何かあればいつでも連絡して。」
「こっちのことは大丈夫です。心配しないでください。おじいさんのこと、しっかり見送ってあげて下さい。」
「ありがとう。」
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