罠 #2

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他の部署からの依頼は私が秘書の業務もしていることもあって、自然と池口さんが窓口みたいになっていた。 私がこの案件に取りかかると、なんとこの日はさらに2件依頼がきた。 「池口は?」 その質問に答えると相手は遠慮するけれど、仕事は仕事。 「こちらの事情は気にしないで下さい。納期の急ぎの順にやりますから納期だけ教えて下さい。」 週の頭から大変な忙しさ。 定時があっという間にやってきて、怒涛の残業時間突入。 気を使って雑用のほとんどは琴ちゃんがこなしてくれた。 琴ちゃんは申し訳なさそうにいつもの時間には帰宅した。 部長と二人だけの事務所。 今までこんなことたくさんあったのに、初めて変に意識してしまう。 けれど、ここは職場。 私は邪心を振り切ってキーボードを打ちこむ。 そんな中。 「…俺のこと…意識してるのか?」 顔を向けるとパソコンの向こうに笑った部長の顔があった。 「…な、し、してません。」 「なーんだ。俺はしてたのに。」 なーんだって、部長、子供みたい。 「嘘です。ホントはドキドキしてました。」 私が白状すると部長は嬉しそうに言う。 「…ドキドキ?…確かめたいな。」 あ、出た。この顔。 「ぶ、部長、ダメですよ。ここは…」 「冗談だよ。」 部長はいたずらっぽく笑った。 束の間の二人の時間。 一日忙しく流れてきた時間の中のほんのひと時の穏やかな時間。 そんな時間を破ったのはまたしてもあの人。 嵐を呼ぶ人、勝野課長。 でも、この日は… …本当の嵐になってしまった。
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