罠 #2

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勝野課長はノックもせずに入ってきた。 勝野課長は部長だけをまっすぐ見ていたけれど、私の存在に気付くとあからさまにため息をついた。 「あら、室井さんもいたの?」 明らかに迷惑そうな声色だった。 …どうしよう。 …いない方がいいのかな。 なんだか居たたまれなくなって席を立つ。 「…部長。コーヒー入れてきます。」 するとすぐに部長が言う。 「今はいい。室井君は仕事続けて。」 「…はい。」 私は部長に言われて、まずい雰囲気の中、また腰を下ろし、パソコンの液晶に目を移した。 「勝野、何の用だ?」 「あ、…うん。…用事って訳じゃないんだけど。」 勝野課長の歯切れが悪かった。 「じゃあ、何だ?俺と室井君がどんな様子か確かめに来たのか?」 「え。」 「あの夜、俺は成瀬から彼女を迎えに来るよう言われた。成瀬と彼女は何もなかった。…君の計算とは違ったな。」 「…え。な、成瀬から聞いたの?」 「ああ。」 「何もなかったって、信じるの?二人で車内にいて、何もないわけないじゃない!!室井さんだって、あんなんじゃ、何かされてたってわからなかっただけじゃない!?」 「成瀬という男をあまり見くびらない方がいい。アイツはああ見えて男気のある奴だ。」 「な、なんなのよ、成瀬まで。」 「…言っておくが、俺がお前を殴らないのはお前が女だからだ。男だったら今頃は殴り倒してる。お前のしたことはそういうことだ。」 部長の声に私も体が縮む。 本気で言ってる。 「俺と室井君が付き合うのがそんなに気に入らないのか?」 「だって、私の方が、ずっとあなたを想ってたのに!ずっと前から!なんで、なんで、あの子なのよ!?」 勝野課長の声は震えていた。 「それなら、教えてやるが俺も室井君のことは二年以上も想っていた。やっと手に入れたんだ。離すつもりも、離れるつもりもない。」 「…う、…嘘…でしょ。」 …嘘…。 私も驚いてしまった。 …部長。 …二年以上って…? 部長の言葉に胸が締め付けられた。
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