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「…そんな、む、室井さんはどうなのよ?あなたなんか何にも考えてなくて、西島君から声かけられて、ちょっとカッコいいからって付き合ってみただけなんじゃないの?」
…え?
「あなたなんか、西島君じゃなくたって声かけてくれる男、いっぱいいるじゃない!!お願いだから西島君を私にちょうだい!」
…え?ちょっと待って。
「あんたみたいに適当な気持ちで西島君と付き合ってるの、絶対に許せない!」
待ってってば!!
私は席を立った。
「勝野課長。勘違いしてます。私、好きでもない人とはお付き合いはしません。部長がカッコいいから付き合ってるんじゃありません。…好きだからお付き合いしています。私にとって部長の代わりなんていませんし、部長が私を選んでくれたなら、私は部長と自分のために離れるつもりはありません。」
「…な、…私はずっと前から…。」
「…私は勝野課長みたいに、ずっと部長を想ってきた訳じゃありません。でも、今は誰よりも部長が好きです。」
勝野課長は強気に出た私が意外だったのか目を丸くして言葉を失くしていた。
代わりに言葉を発したのは部長だった。
「聞いたか?俺たちは互いに想い合って付き合っているつもりだ。この先もそれは変わらない。まだ、何か言うことがあるか?」
勝野課長は何も言わなかった。
「…もう…いいわ。」
たぶん、そう言ったんだと思う。
勝野課長は静かに事務所を出て行った。
静かなフロアに響く硬いヒールの音だけがなんだかとても悲しく聞こえた。
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