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勝野課長が出て行った後、私の中には何か込み上げてくるものがあった。
部長が私を二年以上も想ってくれてたこと。
恋愛は全ての人の願いは叶わないこと。
女性としての勝野課長の想い。
でも、やっぱり、私は部長が好きで、誰にも渡せない。
いろんな思いが私の視界を滲ませた。
崩れるように椅子に座りこむ。
部長が側までやってきて、私の頭に優しく手を乗せる。
「今日はもう帰ろう。」
私は頷いて帰りの支度をする。
エレベーターの前で待っていた部長と一緒に駐車場に降り、部長の車に乗って会社を出る。
会社の前の道路に出ると、部長がすぐに車を路肩に寄せる。
ハザードを灯した車内で部長は私を引き寄せる。
優しいキスだった。
私はまた涙が出てきてしまって、部長の指がそれを拭う。
こんなにも部長が好き。
どうか部長もそうであって欲しい。
「俺たち、ちゃんと両想いだな。」
顔を離した部長が笑って言う。
"両想い"
何だか幼いその言葉は、すごくくすぐったくって、でも今の私たちにはぴったりだった。
「はい。両想いです。」
部長がまたキスをくれる。
今度は甘くて熱いキスだった。
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