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料理のテーブルに着いても、部長は私に背を向けて、自分は料理を取ろうともしない。
楽しみにしていた料理も、こんな状態じゃ味わえない。
さっきまであんなに楽しみにしていたデザートのタワーも煌(キラ)びやかさを失って、霞んで見えた。
塔の頂上のあのスイーツが食べたかったのに。
涙が滲んで来ると同時に、突然声を掛けられる。
「どうかしましたか?」
知らない男性だった。
男性に声を掛けられたらまた、部長の機嫌を損ねてしまう。
「なんでもありません。」
私は慌てて答えるけれど、目に溜まった涙が今にも溢れそう。
「すみません、化粧直しに。」
「一緒にいきましょうか?」
「だ、大丈夫です!」
思わず大きな声で断ってしまった。
涙目の私は体調が悪く見えるかもしれない。
心配してくれたのかもしれない。
きっと不快な思いをさせてしまったと思う。
あの人は関係ないのに。
そんな自分も嫌で、こらえきれずに目から涙がこぼれ落ちた。
私は部長を見ることも出来ずにホテルのパウダールームに駆け込んだ。
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