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渋滞で待ち合わせに少し遅れてしまった。
ホテルに入ってロビーでゆいを探す。
すぐに見つからないが、男が女を囲っている一角が目に留まる。
嫌な予感がする。
案の定、男の輪の中にはうろたえるゆいの姿。
「ゆい!」
ゆいは俺の声に安堵の表情を見せる。
「俺の連れだ。行こう。ゆい。」
ゆいを男たちから引き離す。
男たちが俺にかまわず、ゆいの背中を目で追うのが分かった。
慣れないヒールの高さにゆいの歩みはおぼつかず、俺が腰を支える。
男たちから離れて人気のないところまでゆいを連れて来た。
真正面からゆいを見る。
「…ゆい。綺麗だ。ここまで変身するとは思わなかった。」
「…あ、ありがとうございます。秀一さんも素敵です。」
照れて俯くゆいがたまらなく可愛い。
俺はゆいの後ろに回る。
「…ゆい、これ、下着はどうなってるんだ?」
「…上は…着けてません。」
「着けてない!?」
思わず声がでかくなる。
それにゆいは顔を真っ赤に染めた。
確かに、俺の要望通り胸元は開いていないが、これじゃ、胸元よりエロくないか?
黒いレースから覗くゆいの白い肌が、見えていない部分まで想像を膨らましてしまう。
でも、本当に綺麗だ。
メイクも普段より大人っぽいが、決して派手じゃない。
いつもより赤く色付いた唇が色気を放って、ゆいは正に甘い蜜をたたえた花そのものだった。
甘い蜜には虫が群がる。
「ゆい。今日は出来るだけ俺から離れるなよ。」
俺が念押しするが、当の本人は返事をしたもののなぜかはわかっていない様子だ。
俺はゆいにはわからないように小さく溜め息をついた。
「…ゆい。会場に行くぞ。」
「はい。」
そう言って、俺に微笑むだけで俺の心を鷲掴みにする。
パーティーの間、他の男にその顔は向けないでくれよ。
俺はゆいの腰を引き寄せ、エレベーターに向かった。
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