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エレベーターを待っていると、5、6人が同時にフロアに立った。
その全ての視線がゆいに向けられているのではないかと内心ハラハラする。
エレベータが着き、扉が開くと一緒に待っていた一行が乗り込んだ。
ゆいの足も一歩進むが、俺はゆいの腕を引いて留まらせる。
「どうそ、先に。」
エレベータの中の顔が不思議そうに俺の顔を窺う。
隣のゆいも同じだ。
扉が閉まってしまうと、すかさずゆいが声を掛けてくる。
「行かないんですか?」
「他の男と一緒に乗せられるか。結構な至近距離だぞ。」
その言葉にまた顔を赤くする。
「その顔、俺の前だけにしろよ。」
心の中で思ったはずが、声になって出ていた。
そうする内に隣のエレベータが着き、二人で乗り込んだ。
扉が閉まると同時にゆいを引き寄せてキスをする。
こんな姿見といて我慢できるか。
ゆいは急な俺の口づけに驚いて、俺の胸を押して抵抗をするがそれもすぐになくなって、俺のスーツの襟を力なく掴んでいる。
角度を変えて、何度も何度もゆいの唇を貪るように味わう。
蜜を味わえるのはこの俺だけ。
ゆいの唇から甘い息が漏れ始めて我慢が利かない。
ゆいの唇を離したのは扉が開く直前だった。
エレベーターから降りると、その階で待っていた二人組の男が、ゆいを二度見するように顔を動かした。
ゆいの顔を覗くと、キスの余韻でかやけに色っぽく見える。
…失敗した。
俺はなるべくゆいと体を密着させながら受付に足を向けた。
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