華と花

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すごく驚いたんだけど、すぐに冷静さを取り戻す。 原田社長の息子さんとは今日が初対面。 初対面で、結婚なんて冗談以外の何物でもない。 現に原田専務は何も気にしていない様子で言葉を進める。 「とにかく、乾杯しよう。」 そう言って、ウェイターを呼んだ。そこへちょうど戸田社長も加わって、みんなでグラスを手にした。 「親父に、乾杯!」 原田専務がグラスを掲げる。 「おめでとうございます。」 戸田社長、部長と私も続いた。 私はお酒が弱いということがつい最近確実に証明されたので、グラスのシャンパンを舐める程度に留めていた。 「戸田くん。室井さん、綺麗だろ?さっきも話していたんだけど、こんな秘書を持てるなんて戸田くんが羨ましいよ。」 「言っておきますが、室井くんは外見だけじゃなく、中身こそが素晴らしいんですよ。ふふ。私の自慢の秘書ですよ。」 「西島くんがしっかり指導してくれてるしね。」 戸田社長は柔く言って、そう付け足した。 原田社長と戸田社長の談笑が始まり、安心したのも束の間。 「君、お酒弱いの?…まあ、強くは見えないけど。今日は親父のために、それだけでも飲んでくれない?」 思わぬところを見られていたみたい。 …これ、飲まないと失礼になるのかな。 「…すみません。」 私はそう言いながらグラスに口をつける。 と、すぐにグラスが唇から離され、部長が私からグラスを取り上げた。 「申し訳ありません。彼女は酒に弱いので。代わりに私が。」 と、グラスの中身を一気に飲み干した。 それを見て原田専務はニヤリと笑って言う。 「へえ。随分部下思いですね。」 「はい。有能な部下は大切にしませんと。」 「…だよね。彼女、外見だけじゃなくて、中身もいいらしいし。」 そう言って原田専務は私の体の上から下へゆっくり視線を動かした。 その視線の意味がなんだか怖くて一歩下がろうとした時、部長が私の前に立った。
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