華と花

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部長に促されるままに、進んだけど中央の料理のテーブルを過ぎてフロアの隅まで来てしまった。 「…部長?」 不思議に思って横目に見た部長の顔はなぜか険しかった。 足を止めると部長が口を開いた。 「可能性がないのかと聞かれて、なぜないと答えない?決まった人がいるってはっきり言わないのは何でなんだ?それとも、本当にアイツに可能性があるのか?」 「…そ、そんなわけないです!」 「じゃあ、何ではっきり言わない?」 部長。 どうしたの? 怖いよ。 私、そんなに怒らせるようなことした? 「…なんでって。…相手は取引先の社長の息子で専務さんですし。」 「お前は女だ。立場なんて考えなくていい。」 私は何も言えなくなってしまった。 相手は会社の主要取引先の社長の息子さん。 はっきり可能性がないなんて発言を私がしていいかわからなかった。…もし、会社の今後に何か影響があったら……。 それに、決まった人ってどういう意味かわからなかった。結婚を決めた相手ってこと?婚約者ってこと? 私は部長が好きだけど、婚約者なんて胸を張って言える立場なのかよく分からないし、実際婚約はしていないのに。 どう答えればよかったんだろう。 何も言えない私に部長はため息をついて、 「まあ、いい。料理、楽しみにしてたんだろ。行こう。」 そう言って部長は歩き出した。 さっきまで私の腰に手があったのに、今はすたすたと私の前を進んでしまう。 …本当に怒らせちゃったんだ。 涙が出そうなのを必死に堪えて部長の背中を追った。
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