悪い虫

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どうして…こんなことをするんだろう。 ただ、私はあの原田社長の優しい笑顔が頭に浮かんで、涙が溢れた。 戸田社長が部屋に入って来て、一緒にいた美咲が私に駆け寄った。 「社内への出入りを禁止させていただく。」 そう言った、社長の顔は今までに見たことのない硬い表情だった。 私に目を向けると、悲しそうに顔を崩し、 「申し訳ない。辛かったろう。」 そう言って、私と美咲には隣で待つように言った。 返事をして、私たちがドアに向かう途中、 「掛けて話そう。」 社長自身が最初にソファに腰を下ろし、横に部長、向かいに原田専務が座った。 「成瀬くんだね?ちょうどいい、君も横に掛けなさい。」 社長にそう言われて、成瀬さんは補助椅子を出してきて、部長の横に席を確保していた。 隣の応接室に入った途端、 美咲が私に抱きついた。 「…ゆい。」 美咲が泣いていた。 「…美咲……もう、大丈夫だよ?」 そう言って、私も泣いた。 「…大丈夫じゃないよ。…大丈夫…なんかじゃない。」 ドア付近の絨毯に座りこみ、二人でしばらく子供みたいに泣いていた。
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