悪い虫

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「成瀬さん。お疲れ様です。」 「あ、ああ。お疲れ。ごめん。まだまとまってなくて。定時までには出すけどそれで、大丈夫か?」 「大丈夫です。K社の件で、今大変なんですよね?急がせて申し訳ないんですけど、お願いします。」 そこに、ちょうど越石さんもやって来た。 「越石さんは精算書、まとまりましたか?」 「すみません。俺もまだで。後で成瀬さんのと一緒に持って行きます。」 「じゃ、よろしくお願いします。成瀬さん、頑張ってくださいね。」 私は営業部を後にした。 勝野課長は今日も事務所にはいなかった。 精算書はまだ全部揃わない。 揃うのは定時かぁ。 それ以外のところを完璧にしておいて、今日中に絶対データ仕上げる! 足早に事務所に戻り、デスクに着いた途端、またロビーからの呼びだし。 「…室井さん?…室井さんにお客さまです。…B社の………原田専務です。」 「え?」 原田専務? どうして、ここに? しかも、私宛に。 電話の向こうで美咲も腑に落ちない声色だった。 部長の席を見るけど、今は席を外している。 …どうしよう。 でも、会社としては対応しない訳にいかない。 「…すぐに行きます。」 私はそう答えた後、メモ帳を破る。 # 15:30  ロビーに原田専務が私を訪ねて来ました。ロビーに下ります 室井 # 私はメモを部長のデスクに置いてロビーに下りた。 エレベーターの中で不安だけが膨らんでいた。
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