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目が合うとそれを隠しきれないほど気持ちが落胆するのがわかる。
そんな私を気にもせず、原田専務が私の元へ歩み寄る。
「そんな顔してどうしたの?もしかして具合でも悪いの?」
「いえ、そんなことありません。」
早く…戻らなきゃ。
「すみません。会場に戻ります。」
私が専務の前を横切ろうとすると、専務の腕が勢いよく伸びてくる。
私は壁に追いやられ、顔を挟んで両腕を壁に着かれて、身動きが取れなくなってしまった。
「…な、…何を…。」
「ね、ホテルの最上階にスイート取ってあるんだ。今から二人で行かない?こんなホテルのスイート、なかなか見れないよ。もちろん、そこで何もしないなんて言わないけど。」
「…会場に戻ります。」
もう一度言った。
「君、あの西島って男と付き合ってるの?俺、彼より5、6歳は若いと思うけど、若い男と寝てみたくない?俺だったら十分満足させられると思うけど。」
ニヤリと笑うその口元に、嫌悪感さえ感じる。
私も口調が強くなる。
「失礼します。」
専務の手を退けようとしたその時。
視界に別の男性。
…部長…!
…見てた…の?
顔から血の気が引いていく。
原田専務の言葉より、部長に見られたことの方がショックだった。
「これは専務さん。ちょっといたずらが過ぎますね。」
柔らかい口調とは裏腹に、部長の顔はとても冷たかった。
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