2286人が本棚に入れています
本棚に追加
エレベーターが止まり、扉が開くとゆっくりと足を踏み出す。
動悸が早まって、息が苦しい。
…何をしに来たんだろう?
不安で押しつぶされそうだった。
受付に目をやると、美咲が原田専務の居場所を目で合図する。
彼はロビーにいくつかある打ち合わせスペースの一番奥で私を待っていた。
ドクン。ドクン。
心臓が飛び出しそう。
「お待たせしました。」
「へえ。それが君の仕事スタイルか。この間と全くイメージが違うけど、それもいいね。君と仕事してる男たちはかなり我慢強いね。一日中、ムラムラしっぱなしなんじゃない?」
原田専務はのけ反って座ったまま、そんな発言をする。
おまけに視線は相変わらず私を舐めるように撫でている。
「先日は、原田社長のパーティーにお招き頂いてありがとうございました。今日はどういったご用件でしょうか?」
「用件がないと来ちゃだめかな?君に会いに来たんだけど。あ、それが用件か。」
…え?
「…他に…用件は?」
「君に会いに来たんだって。聞いてないの?」
…私は受け答えに困ってしまう。
普通が通用しない。
「…でしたら、…これで失礼してもよろしいですか?」
「待ってよ。来たばっかりじゃないか。それに、この会社、客にコーヒーも出さないの?しかも、取引先の役員にロビーで対応?せめて部屋を用意して欲しいな。」
「…それは、…きちんとした用件でしたら…。」
「これが、この会社の対応なんだね?」
最初のコメントを投稿しよう!