悪い虫

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「清純そうな顔して、体つきはメチャクチャエロいんだ。」 全身に虫酸が走る。 触れられたくない。 体にありったけの力を込めた。 バランスを崩しながら彼から体が離れて、床に膝を着いて倒れこむ。立ち上がって逃げようとすると、また腕を掴まれ今度はソファに投げられた。 …痛いっ…。 「おとなしくしろって言ってんじゃん!あんたのせいでこの会社、終わるよ?明日から取引なし。なーんてね。」 私の上になり、見下ろして、そして、完全に見くだしてる。 私は涙目で睨みつける。 この人、おかしい。 「その顔、全然怖くないよ。むしろかわいい。…いい…眺め。」 気味の悪い薄ら笑いを浮かべ、片手で私の両手を抑えて自由を奪い、もう片方の手で胸元のブラウスに手を掛ける。 体の動く箇所全てで抵抗するのに、ほどけない体。 「あ、そうだ。アイツにわからせてやろう。俺は欲しいものは絶対に手に入れるってこと。証拠を残しとくよ。」 そう言った直後、胸元にチクリと痛みが走る。 私はこの感触を知っている。 そう。 部長が背中にしてくれた。 それと一緒。 一緒なのに全然違う。 …欲しいものは何でも手に入れる? あげない。 あんたなんかにあげない! 私は部長の私なんだから! 「あんたなんかにあげない!!」 声と同時に力を振り絞る。 髪が乱れようと、服がはだけようとかまわなかった。 自分を守りたかった。 自分と部長のために。
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