悪い虫

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部長が入って来た時、同時にドアの外がざわついた。 隣の特別応接にいた、社長のお客さんが帰られるんだ。 ゆいがハッとして自分の身なりを確認している。 次の瞬間。 「美咲、社長のとこに来てた中谷専務が帰られるみたい。悪いけど、私の代わりにお送りして。」 「…あんた、こんな時まで仕事?」 「お願い!」 「…わかった。待ってて。」 私はゆいに返事をして、髪の毛を整えながら気持ちを落ち着かせる。 ドアの向こうに出ると、成瀬さんがいた。 「あ、成瀬さん?あ、連絡すみません。と、とにかく中に入って下さい。私、ちょっと行って来ますから。」 私が中谷専務の見送りをするために、専務に付き添うと、一緒にいた戸田社長が不思議そうに私を見る。 そりゃ、そうだ。 ゆいは?って。思うよね。 中谷専務を見送ると、社長が私に聞いてくる。 「室井くんはどうしたんだ?」 「…は…い。」 私は、どう答えようか迷った挙句、それが正しい判断かはわからないけど、社長をあの応接室にお連れすることにした。 応接までの短い道のりで、私の知っている限りのことを、社長に伝えた。 「それは、穏やかじゃないね。」 社長の顔は普段見ない、険しい表情へと変わった。
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