悪い虫

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「そもそも、取引先の専務という肩書がなければ女を抱けないのでは?」 「…何言ってんだよ。」 「そう言って肩書をちらつかせれば、寄って来る女もいるんだろう?お前にはそんな女が似合いだと思うが。」 今のこいつに敬語など無用だ。 「あー、ムカつくな。あんた。あんたこそ、彼女イメージよりよっぽどエロい体してるよね。同じ会社で、部署も同じなんでしょ?社内でやりたい放題じゃん。」 「何だと?」 俺は奴の胸ぐらを掴んでいた。 「部長!!ダメっ!」 思いがけず、ゆいが止めに入った。 ゆいはそれ以上言わなかったが、ゆいの目を見て奴から手を離した。 そして、俺の代わりにゆいが奴に言葉を投げる。 「…欲しいものは何でも手に入れるって言ってましたね?今まで手に入れたものは本当に欲しいものでしたか?…私のことも。」 「うん。欲しかったよ。」 「きっと、違う。…あなたみたいな人は本当に欲しいものは手に入れられない。…あなたに言えるのは一つだけ。…これ以上、原田社長の顔に泥を塗らないで。」 ゆいは言いながら、泣き崩れた。 俺は奴に言う。 もう冷静だった。 「帰ってくれ。もう彼女の前に現れないでくれ。」 「…まだ…手に入れてないんだけど。」 わずかに、奴の声色が変わった。 その時。 「社内への出入りを禁止させていただく。」 そう言いながら社長がゆっくりと室内に入り、藤森が後から続いて、ゆいに駆け寄った。
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