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涼太は部長の腕の中で眠っていた。
寝室に私が敷いた布団にそっと寝かせると、頭が汗でびっしょりだった。きっと体も汗をかいてるはず。起きたら着替えさせなきゃ。
部長と顔を見合わせて静かに寝室を出た。
「秀一さん、すみません。」
「いや。泣き疲れたんだろう。ゆっくり寝てくれるといいが。」
「ホントですね。今、冷たいもの入れますね。」
私たちの声は自然と小声になり、ソファで一息つくことにした。
「一人子供がいるだけでこんなにも大変とはな。」
「…本当ですね。私、秀一さんに来てもらって本当に良かったです。秀一さん、子供の扱い上手じゃないですか。いいパパになれますよ。」
「そうか?予行練習のつもりで頑張った。」
「…予行…練習?」
「ああ。ゆいと俺にもいずれ子供ができるだろ?」
「…え?」
「なんだ?子供は欲しくないのか?」
「…そ、そうじゃなくて。…あの、子供は欲しいです。…授かりたいです。」
「良かった。俺も子供は欲しい。男と女。な、楽しそうだろ?」
そんな風に、またさらりと言ってしまう部長の言葉が私の心を掴んで離さない。
私たちの将来を当り前のように言ってくれる部長に、自然に笑顔を返せるようになるのはいつのことだろう。
今の私にはドキドキしすぎちゃって、とてもさらりとはいかない。
顔も真っ赤だって自分でわかっちゃうくらいだよ。
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