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車の中でゆいが俺に遠慮がちに話しかける。
「…秀一さん、今日は…いつもと少し違いますね。」
「何がだ?俺がまた、嫉妬に狂ってお前を責めて、押し倒すかとでも思ったか?」
「え。…あ、いえ…、そんなことは…。」
「ゆいは正直だな。俺だって少しくらいの学習能力はある。こんな日にゆいに悲しい顔はさせたくない。その服装も、その髪もメイクも、ゆいが笑っていなければ意味がない。…ゆい、今日も綺麗だ。」
「…あ、ありがとうございます。」
ゆいは俺の言葉に頬を染める。
今日のゆいもまた、本当に可愛い。
俺と過ごすために選んだその白いレースのワンピースはあの男が妬くのも頷けるほど、ゆいの甘い雰囲気を醸し出していた。
もちろん、嫉妬はしている。
俺の性格だ。
ゆいのことをゆいと呼び捨てにされているだけでも苛々する。
しかし、
ゆいが言った。
今日のこの日を
"好きな人と過ごしたい"と。
"彼氏"とではなく、
"好きな人"と。
ゆいにとって俺は
彼氏である前に
好きな人。
それが無性に俺の心をくすぐり、嫉妬心さえも包んでしまったようだった。
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