誕生日の宣戦布告

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「室井君、これ、頼めるかな?出来れば市川君に教えながらやってもらえるとありがたいが。」 「わかりました。そうします。」 「室井さん、ごめん。こっちも頼みたいんだけど。俺のは今日中にもらえればいいから。」 「わかりました。」 そうこうしている内に、社長のお客さんがみえる時間。 時間より少し早めに受付からの内線が鳴る。 「はい。すぐに伺います。」 「琴ちゃん、戻るまでにこれのチェックと、この資料綴じて見出しも付けといてもらえる?」 「わかりました。」 「ロビーに行ってきます。」 私は足早に事務所を出て、エレベーターに乗り込んだ。 これからお迎えする社長のお客さんは原田社長。 息子さんの原田専務のあの出来事以来、原田社長には初めてお会いする。 少しだけ緊張していた。 原田社長は知っているんだろうか。 ロビーに下りると、原田社長がいつも通りの笑顔で待っていた。 その笑顔に心底ホッとした。 きっと、知らないんだ。 私にはその方が良かった。 「やあ、こんにちは室井さん。」 「こんにちは。いつも大変お世話になります。パーティーにはご招待頂いてありがとうございました。素敵なパーティーでした。」 「い、いやいや。こちらこそ室井さんの素敵な姿とプレゼント、嬉しかったよ。」 「今日も社長室にご案内いたします。」 「ああ。すまないね。」 原田社長の笑顔はいつも通りとは思ったけれど、エレベーターの中はいつもは何でもない話で私を笑わせてくれるのに、今日はそれがなかった。
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