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「え、…な、…どうして?」
驚きすぎて上手く言葉にならない。
「どうして俺が誕生日を知ってたかって?ゆいの上司だぞ?経理に加えて総務部長。ゆいの誕生日なんてすぐにわかる。」
「あ…。」
「俺の立場が初めて役に立った。」
そう言って部長は笑う。
「ゆい、プレゼントだ。開けてみろ。」
部長は小さな長細い包みを私に差し出した。
「…嘘…。…プレゼントって…。」
「いいから、開けろ。」
小さな箱に巻かれたリボンをほどく指が震える。
部長からのプレゼント。
その間にも、ピアノで奏でるハッピーバースデーは繰り返し店内に響いていた。
箱の蓋を開ける前にもう一度部長を見る。
部長はやさしく頷いてくれた。
そっと、蓋に手を掛けて中身を見ると、
そこには白くて上品な一本のペンが納まっていた。
それを箱から取り出す。
全体が白で、ノックの部分や縁取りが金色。
「…綺麗…。」
そして、一つのイニシャルを見つける。
S
その文字の横にキラキラ光る石が埋め込まれていた。
「…あ、…ありがとうございます。…秀一さん。すごく素敵です。すごく素敵で…綺麗で…すごく嬉しいです。」
「良かった。俺とお揃いだ。」
そう言いながら自分のものだというもう一本を私に見せてくれた。
部長のは私と対照的に黒に銀の縁取り。
イニシャルは Y だった。
「お揃いなんて…もっと嬉しいです!」
部長と自分のもらったボールペンを並べて、本当に幸せな気分だった。
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